ビールは麦汁を搾る段階までは同じ工程ですが、その後の発酵段階で使用する酵母により、上面発酵と下面発酵という二つのタイプに分けられます。
その他に、酵母を使用しない自然発酵のビールもあります。
このページでは 下面発酵タイプ についてご紹介します。
酵母の特徴
下面発酵で使用する酵母は、発酵が進むと麦汁の下へ沈んでいく特徴があるため「下面発酵」、英語では「lager(ラガー)」と呼ばれます。
上面発酵のエールビールより歴史は浅く、世界に広がりを見せたのは18世紀に入ってからです。
製法の誕生自体はもう少し前で、ドイツ南部のバイエルン地方で凍りそうなほどの低温でも発酵し続けるという例がみつかりました。のちの下面発酵です。
低温であると雑菌が繁殖しにくくなり品質が安定し、風味や味わいが穏やかになる為、その他の地域にも広まりましたが、当時の貯蔵方法は洞窟や氷室だったため、醸造場所に限りがあったようです。
18世紀になりチェコのプルゼニ(ピルゼン)では、ドイツ・ミュンヘンから下面発酵導入。
それまでチェコで主流だった濃色のビールとは全く異なる、黄金色の爽快なピルスナーが出来上がったのが下面発酵を世界に広めるきっかけとなりました。
当時主流の濃色ビールとは全く違う出来だったのですが、これもまた偶然の産物。
その後、ビールの機械化が進み、低温製法の下面発酵ビールが広がりを見せました。
・発酵温度は おおよそ5~10℃前後
・発酵期間(前発酵)は 1週間~10日ほど
・熟成(後発酵)期間は 1カ月ほど
熟成期間は長くなりますが、低温発酵の為雑菌の繁殖が弱まり品質の管理がしやすく、大量生産に向いていそう・・・
味の特徴
ホップの苦み、すっきりキレのある喉越し、淡色のクリアな色合いが特徴的です。
日本の大手ビールメーカーの主力商品大半が下面発酵タイプなので、イメージしやすいですね。
当サイトでのタイプ分け
醸造の仕方がラガービールとはいえ、その種類は様々。
当サイトでは今のところ5タイプで分類しています。
それぞれの特徴と代表的なレビューをご紹介します。
ピルスナー
ピルスナーは下面発酵が世界に広まったきっかけともいえるチェコ・プルゼニ(ピルゼン)で誕生しました。
淡色のラガービール全般を指します。
ピルスナーのレビュー
シュバルツ
シュバルツ Schwarz=黒 その名の通り、黒い下面発酵のビールです。
ドイツのバイエルン地方が発祥と言われています。
ローストした麦芽を使うことにより黒色の液体になり、味わいもローストした香ばしさと苦さがあります。
下面発酵なのでスッキリした部分もありますが、香ばしさと若干の甘さが麦芽の味わいを感じさせます。
シュバルツのレビュー
ミュンヒナーデュンケル
ミュンヘンで造られる色合いの濃いビールです。
色合いが濃くなるのは硬水を使用しているから・・・らしいですが、濃色麦芽やカラメル麦芽も使用しています。
麦芽の香ばしさが強くコクのあるラガーです。
当サイトでは、アンバーラガーもこのグループにしています。
ミュンヒナーデュンケルのレビュー
メルツェン
ミュンヘンと言えばオクトーバーフェストで有名ですが、そのために造られるのがこのメルツェン。
オクトーバーフェストビールとも呼ばれます。
ビールを仕込む3月をドイツ語で März=メルツ というのが由来です。
通常より長く熟成させるラガーで、ホップの香りがやや強めです。
メルツェンのレビュー
ボック
高アルコールの下面発酵ビールです。
発祥は14世紀頃、北ドイツのアインベックから始まりました。
当初は上面発酵ビールで、イギリスやロシアへ輸出する為、濃度とアルコール度数を高められ、アインベックビールと呼ばれていました。
インディアペールエールに似た経緯ですね!
その後16世紀ころにドイツ・ミュンヘンにアインベックから醸造家が招かれ、ミュンヘンでアインベックビールの醸造が始まりますが、その際に下面発酵酵母を使用するようになり、ボックと名を変え、今のスタイルになりました。
ミュンヘンで広まったボックは、修道院の断食期間に飲むビールドッペルボックや、ボックより淡色で春先に飲まれるメイボックなど、スタイルにも広がりを見せています。
ボックのレビュー
ラオホ
麦芽を燻製することによってビールにスモーキーな味わいを出すスタイルです。
ラオホ(Rauch)とはドイツ語で「煙」という意味。
ドイツ・バンベルクの名物ビールで、バンベルグスタイル・ラオホが代表的なラオホビールですが、同じように燻製麦芽を使用して醸造されるビールはそれぞれのスタイルによって細かく分けられます。
バンベルグスタイルは下面発酵(ラガー)ですが、上面発酵(エール)のラオホも存在します。
- ヘレス・ラオホ
- メルツェン・ラオホ
- ボック・ラオホ
- ヴァイス・ラオホ(エール)
- デュンケル・ヴァイス・ラオホ(エール)
昔は麦芽を完成させる工程で、火の上に直接さらして乾燥させていた為、煙で燻される状態になり燻製のフレーバーがついたとか、火事で燃えてしまった麦芽を使ってみたとかでラオホビアが誕生しました。
ラオホのビアログ