上面発酵ってどんなビール?

上面発酵ビールとは?

ビールは麦汁を搾る段階までは同じ工程ですが、その後の発酵段階で使用する酵母により、上面発酵と下面発酵という二つのタイプに分けられます。

その他に、酵母を使用しない自然発酵のビールもあります。

このページでは 上面発酵タイプ についてご紹介します。

目次

酵母の特徴

上面発酵で使用する酵母は、発酵が進むと麦汁の表面に浮き上がってくる特徴があるため「上面発酵」、英語では「ale(エール)」と呼ばれます。

歴史は古く、下面発酵のラガービールが誕生するまでは、ビールといえば上面発酵のエールビールが主流でした。

発酵環境・期間

・発酵温度は おおよそ15〜25℃、ほぼ常温

・発酵期間(前発酵)は 3〜5日

・熟成(後発酵)期間は 約2週間

熟成させる期間が比較的短いので、醸造タンクの回転率が上がりそう・・・w

味の特徴

上面発酵は比較的香りも味も強めで、香りはフルーティなものが多く、味にコクがあります。

アルコール度数が高いものも多くあります。

当サイトでのタイプ分け

醸造の仕方がエールビールとはいえ、その種類は様々。

当サイトでは今のところ9つのタイプに分類しています。

それぞれの特徴をご紹介します。

ペールエール

Pale=淡い という名称の通り、淡い色合いの麦芽(モルト)を使用して醸造されるビールです。

発祥はイギリスのバートン・オン・トレント、バス・ペールエールで有名なバス・ブリュワリーのある町です。

濃色や濁ったビールが主流だった18世紀に、澄んだブロンズ色に輝くペールエールが誕生しました。

ペールエールのレビュー

IPA /セッションIPA

18世紀にイギリスで誕生したペールエールを、当時イギリス領であったインドまで運ぶために誕生したのがインディアペールエールです。

IPAとはIndia Pale Ale の略語

長期輸送での品質劣化を防ぐため、アルコール度数を高め、ホップ増し増しで醸造。

苦味と香りが強く、高めのアルコール感が特徴的です。

そして、IPAのフルーティーな香りを生かしたまま、アルコール度数と苦味を抑えた、セッションIPAがアメリカで誕生しました。

セッション=Session は 集まりや会合を表す言葉。

想像するに、アルコール度数低めのセッションIPA・・・お酒を楽しむ場で酔っ払いすぎることなく、香り高いIPAを長い時間楽しめるよう造られたビール でしょうか。

IPA /セッションIPAのレビュー

アンバーエール/アルト

アンバーエールとアルトはそれぞれ異なる地で誕生したビールですが、ペールエールより濃い目の銅褐色な色合いのエールビールとして、当サイトでは同じグループとしています。

アンバーエールは、アメリカ西海岸が発祥と言われています。
アンバー=琥珀 の名の通り、琥珀色のビールです。一部、濃色麦芽を使用して醸造することによりこの色合いが生み出されます。

アルトはドイツのデュッセルドルフが発祥です。
ドイツ語でアルトとは alt=古い を意味する通り、下面発酵ビールより歴史が古い、伝統的なビールです。

アルトビールには、ライバル的存在のケルシュがあります。ケルシュについては次項目でご紹介しています。

アンバーエール/アルトのレビュー

ケルシュ

ドイツ・ケルン地方で伝統的に醸造されているエールビールです。

ケルシュと名乗ることが出来るのは、この地方で醸造されたビールのみ。
ケルシュブランドを守るために、ケルシュ協約(16項目)というものがあり、この協約に調印している醸造所だけがケルシュを名乗ることが出来ます。

シャンパンやロマネコンティと同じ、AOC(原産地統制名称)ルールですね。

同じ製法でも、ケルシュ協約に調印していない醸造所が造れば、ケルシュ風スタイルということになります。

伝統的な飲み方は、200mlの細長い円柱グラス(高さ13センチほど)に注ぎ、泡を1インチ(2.54cm)にします。
ケルン地方のパブでは、わんこそばスタイルで自動的におかわりが提供されます。

ケルシュがケルン地方の伝統的なビールであるのに対し、アルトはデュッセルドルフの伝統的なビールです。
この二つの都市は昔からライバル意識が強く、ビールをはじめ、サッカーや観光においても、犬猿の仲と言われています。

デュッセルドルフとケルンの間は距離にして35kmほど(電車で40分くらい)しか離れていないのですが、お互いのビールはシャットアウト状態なので、各都市でビールを注文するときは、絶対に間違ってはいけません!!!!!

ケルシュのレビュー

ヴァイツェン/ホワイトエール

ドイツ語でヴァイツェンとは Weizen=小麦 を意味する通り、小麦麦芽を50%以上使用して醸造されるビールです。

特にドイツ・バイエルン地方で発展してきたビールです。

発酵にはヴァイツェン酵母と呼ばれる酵母が使用され、バナナのような独特のフルーティな香りが生まれます。
また、泡立ち・泡持ちがよく、フルーティでスパイシーなスッキリした味わいなものが多く、ホップの主張は弱めです。

無濾過なものをヘーフヴァイツェン、濾過したものをクリスタルヴァイツェンと呼びます。

小麦の事を英語では wheat(ウィート)と言いますが、アメリカのウィートエールはヴァイツェンに近いと言えます。
ウィートエールは、小麦酵母の風味よりもホップの香りが強めです。

ホワイトエール、いわゆる白ビールも小麦麦芽の割合を多くしたビールです。
通常ヴァイツェン酵母を使用しますが、醸造所によってはエール酵母を使用する場合もあるようです。(この場合、一般的なヴァイツェンより香りが弱くなる)

当サイトでは、小麦麦芽使用・白っぽい色合いという点で、ヴァイツェンとホワイトエールを同じグループにしています。

ヴァイツェン/ホワイトエールのレビュー

デュンケルヴァイツェン

基本的にはヴァイツェンと同じ製法ですが、デュンケル Dunkel=暗い の言葉通り、濃い色合いのビールです。

ロースト麦芽を使用しているので、濃い目の茶色になり、香りと味わいに麦芽の甘さや香ばしさが感じられるのが特徴的です。

小麦の黒ビールという感じ。

そのため、当サイトではダークウィートもこちらのグループにしています。

デュンケルヴァイツェンのレビュー

スタウト/ポーター

英語ではポーター Porter=荷物を運ぶ人 を示す言葉ですがなぜビール名になったのか。

始まりはブレンドビール。
古くなり酸味が出て味が落ちたブラウンエール(濃い色のエール)に、新しいブラウンエールとペールエールを混ぜたスリースレッド(3つの糸)というブレンドビールが流行りました。

オーダーを受ける都度、パブで3つを混ぜて提供するのが面倒すぎるので、醸造工場の段階で混ぜ合わせてエンタイア(ひとまとまり)というエールを作ってを販売したところ、大ヒット。

一説ではエンタイアがポーターたちに好んで飲まれるようになり、ポーターと呼ばれるようになったと言われています。
(ポーターがエンタイアを運んでいたからという説もあります) 

ポーターと呼ばれるようになったエンタイアがアイルランドへ伝わり、ギネス創始者のアーサー・ギネスによってスタウトポーターが考案されました。

深煎りの大麦を使用し、クリーミーな泡と重厚な焦げた味わいが特徴的なスタウトというスタイルが確立されました。
※スタウトについては各国や法規制などで基準に違いがあります。

当サイトでは上面発酵で大麦麦芽使用の黒ビールをスタウトと位置付けて、ポーターと同じグループにしています。

スタウトの種類 例

・ドライスタウト
・ミルクスタウト/スイートスタウト
・オイスタースタウト
・インペリアルスタウト
・チョコレートスタウト

スタウト/ポーターのレビュー

セゾン

ベルギー発祥のエールビールで、農家が自家用に醸造していたものがセゾンビールと呼ばれていました。

夏の暑い時期用で、農作業の合間にのどを潤す飲料として、冬場に醸造・瓶詰めされます。
貯蔵して瓶内二次発酵を行い、夏に飲むという・・・ フランス語でセゾン Saison=季節 限定のビールです。

近年では、暑い夏に飲むビールというイメージから、フルーティかつスッキリした味わいで、喉越しが爽快な、全体的に爽やかなのビールを指す事が多くなっています。

タイプに限らずセゾンと銘打たれることも多くなっていますが、基本的には上面発酵(エール)でしょう。

セゾンのレビュー

バーレーワイン/ウィートワイン

ビール?ワイン? ちょっとややこしいタイプですが、イギリス発祥の長期熟成で高アルコールなエールビールです。

ぶどうの生産が出来ず、ワインを作ることが困難だったイギリスで、フランスのワインに対抗するものとして登場しました。

バーレイワインは、バーレイ Barley=大麦 を使用した長期熟成ビールで、半年~数年という期間熟成します。
タンク・木樽など熟成方法は様々で、アルコール度数を高める為にシャンパン酵母など複数の酵母を使用することもあります。

ウィートワインは、ウィート wheat=小麦 を使用た長期熟成ビールですが、その発祥はアメリカです。

バーレーワイン/ウィートワインのレビュー

各タイプに含む、その他のエールビール

細かく分けるときりがない上面発酵のさまざまなタイプ・・・

なので、醸造所表記はこうだけど、当サイトではここに分類!的なメモをこちらに記載しています。

ストロングエール/ゴールデンエール

ベルギー発祥のスタイルで、高めのアルコール度数が特徴的な上面発酵ビール。

アルコール度数は大体7~10%が多く、色合いは様々です。

使用するホップによって特徴があり、イギリス産ホップ使用のイングリッシュスタイルは香ばしい香りで、アメリカ産ホップ使用のアメリカンスタイルは柑橘系の香りを楽しめます。

当サイトでは、色の濃さにより、ペールエールかアンバーエールの分類をしています。

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